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2020年度 内藤記念科学振興賞
内藤記念科学振興賞に
東京大学 大学院医学系研究科 教授 岡部 繁男 博士
内藤記念科学振興財団 (理事長: 内藤 晴夫) は、このたび開催されました理事会において、「2020年度(第52回)内藤記念科学振興賞」を東京大学 大学院医学系研究科 教授 岡部 繁男 博士に贈呈することを決定いたしました。
受賞者には、賞状、金メダルのほか、副賞1,000万円が贈られます。
受賞対象研究内容及びご略歴
岡部 繁男 博士
受賞対象研究内容
テーマ:『脳神経回路の形成とリモデリングの分子機構』
生まれたての動物の脳は未熟で、生後の経験によってその機能が十分に発揮されるようになります。認知機能を含む多様な脳機能の基盤となるのが神経細胞のネットワークである神経回路です。私はこれまで神経回路の形成とそのリモデリングについてイメージングを活用した研究を推進してきました。
神経回路は神経細胞同士がシナプスと呼ばれる構造を介して結合することで形成されます。シナプスはミクロンレベルの微細な構造であるため、シナプスがどのように脳の中で形成されるのかは2000年頃までは全く知られていませんでした。当時私は神経細胞の細胞骨格の蛍光イメージング技術を開発しており、この手法を蛍光蛋白質の発現システムと組み合わせることで、生きた神経細胞のシナプス形成を初めて可視化しました。それまでの発生神経科学の教科書にはシナプスはゆっくりと成熟すると書かれていましたが、実際には発達過程のシナプスは短時間で形成・消失する動的な構造でした。回路の成熟後にはシナプスは安定化されることも明らかとなり、シナプスの安定化は脳の発達期から成熟期へのスイッチであると考えられました。その後の研究でシナプス分子の交換速度とシナプス構造の柔軟性の関係、それぞれの回路特有のシナプス形成機構の存在も明らかにしました。また神経回路の障害はヒトの脳疾患とも関連し、特に自閉スペクトラム症と回路発達障害の関連が注目されていますが、自閉症モデルマウスを解析することで、シナプス動態の障害を直接的に示しました。
ヒトは数十年にわたって経験を蓄積できる一方で、直前の経験によって行動を変化させることも出来ます。このような「安定性」と「柔軟性」の両立を可能とする機構をシナプスが持つことがこれまでの研究で明らかとなりました。このような研究は脳の生理機能の理解と精神神経疾患の病態解明に大きく貢献しています。
略歴
- 勤務先:
- 東京大学大学院医学系研究科
〒113-0033 東京都文京区本郷7-3-1
- 東京大学大学院医学系研究科
- 学 歴:
- 1986年3月
- 東京大学医学部医学科 卒業
- 1988年8月
- 東京大学大学院医学系研究科 退学
- 免 許:
- 1986年5月
- 医師免許(第297673) 取得
- 学 位:
- 1992年10月
- 医学博士 取得(東京大学)
- 職 歴:
- 1988年9月
- 東京大学医学部解剖学教室 助手
- 1993年5月
- 米国国立保健研究所(National Institutes of Health)客員研究員
- 1996年6月
- 通商産業省 工業技術院 生命工学工業技術研究所 主任研究官
- 1999年4月
- 東京医科歯科大学医学部解剖学教室 教授
- 2004年4月
- 東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科細胞生物学分野 教授
- 2007年9月
- 東京大学大学院医学系研究科神経細胞生物学分野 教授
- 2018年4月
- 理化学研究所脳神経科学研究センター 脳神経医科学連携部門長(兼任)
- 受賞歴:
- 1994年5月
- 日本解剖学会奨励賞受賞
- 2005年7月
- 塚原仲晃記念賞受賞
- 2010年6月
- 日本顕微鏡学会学会賞(瀬藤賞)受賞
- その他の公的活動:
- 2007年~2013年
- 日本解剖学会 常務理事
- 2015年~2017年
- 日本解剖学会 常務理事
- 2017年~2019年
- 日本解剖学会 理事長
- 2017年~現在
- 日本顕微鏡学会 理事
- 2008年~現在
- 日本神経科学学会 理事
- 2017年~現在
- 日本神経科学学会 副会長
- 2016年~2018年
- 脳科学関連学会連合 代表
- 2014年~現在
- 日本学術会議会員(第23期、第24期)
- 2016年~2020年
- 日本医療研究開発機構(AMED)
脳とこころの健康大国実現プロジェクト プログラムディレクター - 2014年~現在
- 日本医療研究開発機構(AMED)
革新的技術による脳機能ネットワークの全容解明プロジェクト(革新脳)
プログラムスーパーバイザー - 2019年~現在
- International Brain Initiative(IBI) 議長