振興賞

2022年度 内藤記念科学振興賞

内藤記念科学振興賞に
慶應義塾大学医学部 教授
慶應義塾大学大学院医学研究科 委員長 柚﨑 通介 博士

内藤記念科学振興財団 (理事長: 内藤 晴夫) は、このたび開催されました理事会において、「2022年度(第54回)内藤記念科学振興賞」を慶應義塾大学医学部 教授、慶應義塾大学大学院医学研究科 委員長 柚﨑 通介 博士に贈呈することを決定いたしました。
受賞者には、賞状、金メダルのほか、副賞1,000万円が贈られます。

受賞対象研究内容及びご略歴

柚﨑 通介 博士

受賞対象研究内容

テーマ:『機能的・構造的シナプス可塑性を制御する分子機構の解明』

神経細胞はシナプスを介して電気信号を伝達することによって機能を発揮します。近年、多くの精神・神経疾患の病態の本体はシナプスにあることが分かってきました。神経活動の変化に応じて、シナプスでの信号伝達効率が長時間変化する現象(LTPやLTD)は記憶の基礎過程と考えられていますが、生物個体レベルでの記憶・学習との関連は十分に分かっていません。柚﨑博士らは光照射によってLTP/LTDを操作できるツールを開発し、特定のシナプスにおけるLTP/LTDと、小脳の眼球運動学習との因果関係を初めて証明しました。一方、より長期の記憶は、シナプスの構造変化によって担われます。柚﨑博士らは自然免疫系に属する補体C1qに関連する分子群が中枢神経系でシナプス形成を強力に誘導することを発見しました。さらに人工シナプスコネクターCPTXの開発にも成功し、アルツハイマー病や脊髄損傷モデルマウスに投与すると、シナプス形成を誘導してそれぞれの病態を著しく改善させることを示しました。このように機能的・構造的なシナプス可塑性を担う分子機構の理解を深めることによって、神経回路の解明のみでなく、精神・神経疾患の新たな治療戦略の創出に繋がることが期待されています。

略歴
  • 勤務先:
    慶應義塾大学医学部生理学
    〒160-8582 東京都新宿区信濃町35
  • 学 歴:
    1989‐93年
    自治医科大学大学院博士課程(生化学、香川靖雄教授)修了
    1992‐93年
    日本学術振興会 特別研究員(DC)
  • 学 位:
    1993 年
    医学博士 取得
  • 職 歴:
    1985‐89年
    大阪府立総合医療センター・大阪府健康医療部
    1993‐95年
    Human Frontier Science Program 長期海外研究員
    米国ロッシュ分子生物学研究所 博士研究員
    1995‐02年
    米国セントジュード小児研究病院 助教授
    1997‐03年
    米国テネシー大学医学部 助教授(併任)
    2002‐03年
    米国セントジュード小児研究病院 准教授
    2003年‐
    慶應義塾大学医学部 教授
    2021年‐
    慶應義塾大学大学院医学研究科 委員長
  • 所属学会・公的活動等:
    日本神経科学学会
    会長(2020‐);理事 (2008‐);日本神経科学大会長(2015)等
    日本脳科学関連学会連合
    評議員(2012‐); 将来構想委員(2014‐、委員長2017‐18)
    日本生理学会
    評議員(2003‐); 常任幹事(2008‐18);国際委員(2012‐18)等
    Society for Neuroscience
    Regular Member (1995‐)
    科学技術振興機構(JST)
    さきがけ 領域アドバイザー(2009‐15)
    文部科学省
    脳科学研究戦略推進プログラム プログラムオフィサー(2010‐15)等
    国立研究開発法人 日本医療研究開発機構(AMED)
    脳科学研究戦略推進プログラム プログラムスーパーバイザー(2016‐)
    日本学術会議
    神経科学分科会副委員長(2017‐);機能医科学分科会副委員長(2017‐)
  • 受賞歴:
    2005年度
    北里賞
    2012年度
    時實利彦記念賞
    2013年度
    文部科学大臣表彰(科学技術賞)


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