振興賞

2024年度 内藤記念科学振興賞

内藤記念科学振興賞に
京都大学化学研究所 教授 二木 史朗 博士

内藤記念科学振興財団 (理事長: 内藤 晴夫) は、このたび開催しました理事会において、「2024年度(第56回)内藤記念科学振興賞」を京都大学化学研究所 教授 二木 史朗 博士に贈呈することを決定いたしました。
受賞者には、賞状、金メダルのほか、副賞1,000万円が贈られます。
贈呈式は、3月14日(金)午後3時30分より、日本工業倶楽部大会堂にて執り行われます。

受賞対象研究内容及びご略歴

二木 史朗 博士

受賞対象研究内容

テーマ:『細胞膜透過を促進するペプチドの分子設計と分子機構』

生物活性を有するタンパク質や核酸の細胞内導入は、細胞現象の制御を通した細胞生物学の基礎的理解や医学的展開に大きな意味を持ちます。しかし、特にタンパク質の細胞内導入は困難であり、これを可能とする方法論の開発が待望されていました。二木博士らは細胞膜透過を促進するペプチドを利用した生物活性分子の細胞内送達法の開発と、背景となる細胞側要因の解明に取り組んで来ました。アルギニンに富む種々のペプチド(アルギニンペプチド)が普遍的に細胞膜を透過することを世界に先駆けて示すとともに、アルギニンペプチドがマクロピノサイトーシスを含む多様な機序で細胞内移行することによって、効率的な送達が達成されることを示しました。さらに、クモ毒を改変した細胞内抗体送達ペプチドを新たに開発するとともに、負電荷を帯びた抗体とペプチドの多量体が液滴様複合体を形成することや、細胞との接触により抗体が細胞内に高速流入することを見出しました。二木博士らの発見は、細胞への物質取り込み様式を探る研究や細胞を対象とする化学・生物学的試みに大きな波及効果を与えるとともに、種々の細胞内送達法の開発を促しています。

略歴
  • 勤務先:
    京都大学化学研究所 生体機能化学研究系 生体機能設計化学研究領域
    〒611-0011 京都府宇治市五ケ庄
  • 学 位:
    1989年 7月
    薬学博士 取得 京都大学
  • 学 歴/職 歴:
    1983年 3月
    京都大学薬学部卒業
    1985年 3月
    京都大学大学院薬学研究科修士課程修了
    1987年 3月
    京都大学大学院薬学研究科博士後期課程退学
    1987年 4月
    徳島大学薬学部 助手
    1989年11月
    米国ロックフェラー大学 博士研究員(1991年3月まで)
    1993年 6月
    徳島大学薬学部 助教授
    1997年11月
    京都大学化学研究所 助教授
    2005年 4月
    京都大学化学研究所 教授
  • 所属学会・公的活動など:
    2002年11月
    JSTさきがけ研究者(2006年3月まで)
    2006年 4月
    JSTさきがけ発展(SORST)研究者(2008年3月まで)
    2010年 9月
    ピエール・マリー・キュリー大学(現ソルボンヌ大学)招聘教授(2010年10月まで)
    2013年 9月
    日本生化学会 理事(4期8年、現監事)・近畿支部長(1期2年)
    2016年 4月
    日本ペプチド学会 理事(4期8年)・副会長(3期6年)
    2017年 4月
    日本化学会医農薬化学ディビジョン 主査(5期5年)
    2018年10月
    JST CREST「細胞外微粒子」 研究代表者(2024年3月まで)
    2018年12月
    第10回国際ペプチドシンポジウム/第55回ペプチド討論会 Co-Chair
    2019年 5月
    ハンガリー科学アカデミー 名誉会員
    2022年 4月
    日本薬学会 関西支部長(2023年3月まで)
    2023年 4月
    日本薬学会 理事(継続中)
  • 研 究 歴:
    1987年〜1993年
    徳島大学 助手
    生理活性ペプチドの化学合成
    1993年〜1997年
    徳島大学 助教授
    ペプチドの機能設計(イオンチャネル形成ペプチド等)
    1997年〜2005年
    京都大学 助教授
    アルギニンに富む塩基性ペプチドの膜透過と透過機序
    2005年〜現在
    京都大学 教授
    細胞膜透過を促進するペプチドの分子設計と分子機構
    細胞内送達ペプチドの開発と機能解析
  • 主な受賞歴:
    1997年10月
    日本ペプチド学会奨励賞
    受賞題目:Fmoc固相法を活用した高付加価値ペプチド合成法の開発
    1997年12月
    有機合成化学協会第一製薬研究企画賞
    受賞題目:合成ペプチドの効率的細胞内導入と転写因子活性化制御
    1998年3月
    日本薬学会奨励賞
    受賞題目:蛋白質機能解明と機能創出を目指したペプチド合成
    2020年3月
    日本薬学会賞
    受賞題目:生体膜を標的とする機能性ペプチド:分子設計と作用機序
    2022年10月
    The Akabori Memorial Award
    受賞題目:Peptides that affect membrane structure and permeability


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